combining
化粧水・エッセンス・美容液の違いとは?重ねる順番より大切なこと
化粧水・エッセンス・美容液は、ほとんどが同じ「水」をとろみで分けたもの。肌のpHという視点から、ステップを足すこと、そして減らすことが本当に何をしているのかを見ていきます。
化粧水(トナー)、エッセンス、美容液(セラム)、アンプル。順番どおりに重ねると、ようやく「ちゃんとした」ケアをした気持ちになります。けれど肌はステップの数を数えていません。
肌が実際に読み取っているのは、そこに届いたものそのもの――pHと脂質です。化粧水・エッセンス・美容液の順番に悩む前に、その四つが本当に違う役割を果たしているのかを問い直してみると、見え方が変わります。
化粧水・エッセンス・美容液・アンプルの違いは、ほとんどが「とろみ」
四つの名前は、四つの役割があるように思わせます。けれど実際のところ、その多くはほとんど同じ「水」です。化粧水とエッセンス、美容液を分けているのは、たいてい粘度と濃度であって、成分の種類そのものではありません。さらりとしていれば化粧水、少しとろみがつけばエッセンス、もっと重たくなれば美容液やアンプル、というわけです。
美容液やアンプルには、アクティブ成分が高い濃度で入っていることもあります。それでも、四つすべてを通らなければならない、という肌の決まりはありません。多くの場合は、同じ保湿成分と水を、四つのとろみで四回重ねているだけです。つまり「何ステップか」という問いは、言い換えれば「この重ね方は、私の肌に必要ですか」という問いなのです。

肌は自分を弱酸性に保っている――酸性皮膜(アシッドマントル)
健やかな肌は酸性寄りにいます。表面のpHは平均して4.7前後、5を下回ります(Lambers et al., 2006)。この薄い酸性の膜は、しばしば酸性皮膜(アシッドマントル)と呼ばれます。
酸性皮膜は、ただの数値ではなく、はたらくための条件です。弱酸性の表面は、常在菌が落ち着いて棲むのを助け、バリア機能を整える酵素がその仕事をできる場所をつくります。言い換えれば、肌はすでに自分にとっての最適なpHを知っていて、そこを守っているのです。
pHはバリア機能を直接左右する
その酸性度を中性側へ押しやると、バリアもいっしょに揺らぎます。表面のpHが上がると、バリアの回復は遅くなり、角質層はまとまりを失います(Hachem et al., 2003)。
理由は酵素にあります。バリアの脂質をかたちづくる酵素も、古い細胞を片づける酵素も、それぞれ決まったpHの範囲でいちばんよくはたらきます。表面が中性に傾くとそのバランスは崩れ、脂質はきれいに組み上がらず、不要な角質もなめらかに落ちていきません。pHに触れることは、表面の話ではなく、バリアの話です。
重ねる層が増えるほど、pHは振り回される
ここでステップ数の話が戻ってきます。どの製品も、それぞれのpHでつくられています。洗浄力の強い洗顔料や石けんは、それだけで表面のpHを引き上げ、たんぱく質と脂質をいっしょに奪ってバリアを乱します(Ananthapadmanabhan et al., 2004)。その上にpHの異なる製品をいくつも積み重ねれば、肌がもとの酸性の居場所へ戻る余白は、それだけ小さくなります。
アクティブ成分が入ると、そのぶつかり合いはもっとはっきりします。ビタミンC(L-アスコルビン酸)が角質層をよく通るのは、pH3.5を下回る範囲だけですし(Pinnell et al., 2001; Telang, 2013)、角質ケアに使われる酸――グリコール酸やサリチル酸のようなAHA・BHA――も、低いpHではたらきます(Kornhauser et al., 2010)。pHの異なる製品ではさんでしまうと、ていねいに塗った成分は力を出しきれません。それでいてステップの数だけは増えていきます。重ねる層の数は、効果の数ではありません。
ステップを足す前に、pHを守る
まとめてしまえば、話はシンプルです。肌はすでに最適なpHを知っていて、酸性皮膜とバリア機能でその場所を守っています。いちばん役に立つのは、それを揺らすステップを足すことではなく、邪魔をしないことです。
ですから、スキンケアの良し悪しはステップの数では決まりません。化粧水からエッセンス、美容液、アンプルまでひととおり通ったかどうかではなく、その過程が酸性皮膜を乱したか、支えたか。減らすことは、肌に手をかけないことではありません。肌がすでに向かっている方向へ、ケアの向きをそろえることです。(同じ話をステップ数の側から見た記事は、スキンケアは何ステップ必要なのかをどうぞ。)

今日、ひとつだけ
減らすのはケアではなく、重複している層です。まずはひとつ、外してみてください。
- これから二週間、水っぽいステップ(たとえば化粧水・エッセンス・美容液)をひとつにまとめてみます。同じ役割の層を手放すだけです。
- 洗顔のあと、肌は自分の力で酸性の位置に戻っていきます。すぐに層を重ねるのではなく、ひと呼吸おいて、本当に必要な保湿をひとつだけ添えてみてください。
- ビタミンCやAHA・BHAのようにpHに左右される成分は、清潔な肌にいちばん先に、単独でのせる順番を考えてみてください。
何を足すか迷ったときは、問いはひとつで足ります。今日のケアは、肌のpHを乱しましたか、それとも助けましたか。
長いあいだ私は、ステップが多いほど肌を大切にしていることだと信じていました。化粧水からアンプルまでひととおり重ねないと、落ち着かなかったのです。けれど重ねるほどに、肌はひりつき、揺らぎました。ひとつずつステップを外し、酸性皮膜が戻ってくる余白を残したとき、ようやく肌はキメを取り戻しました。足すことは、大切にすることと同じではなかったのです。
よくある質問
参考文献
- Lambers, H., Piessens, S., Bloem, A., Pronk, H., & Finkel, P. (2006). “Natural skin surface pH is on average below 5, which is beneficial for its resident flora.” International Journal of Cosmetic Science, 28(5), 359–370.
- Hachem, J. P., Crumrine, D., Fluhr, J., Brown, B. E., Feingold, K. R., & Elias, P. M. (2003). “pH directly regulates epidermal permeability barrier homeostasis, and stratum corneum integrity/cohesion.” Journal of Investigative Dermatology, 121(2), 345–353.
- Ananthapadmanabhan, K. P., Moore, D. J., Subramanyan, K., Misra, M., & Meyer, F. (2004). “Cleansing without compromise: the impact of cleansers on the skin barrier and the technology of mild cleansing.” Dermatologic Therapy, 17(Suppl 1), 16–25.
- Pinnell, S. R., Yang, H., Omar, M., et al. (2001). “Topical L-ascorbic acid: percutaneous absorption studies.” Dermatologic Surgery, 27(2), 137–142.
- Telang, P. S. (2013). “Vitamin C in dermatology.” Indian Dermatology Online Journal, 4(2), 143–146.
- Kornhauser, A., Coelho, S. G., & Hearing, V. J. (2010). “Applications of hydroxy acids: classification, mechanisms, and photoactivity.” Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology, 3, 135–142.
この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断・治療に代わるものではありません。