moisture & barrier
スキンケアに10ステップはいらない理由
スキンケアは、本当のところ何ステップ必要なのでしょうか。ミニマルなルーティンが「韓国式10ステップ」に勝る理由を肌バリアの科学からひもとき、本当に大切な3つの役割を紹介します。
肌のきれいさは、かけた手間に比例する——私たちはつい、そう考えてしまいがちです。化粧水(トナー)、エッセンス、美容液(セラム)、アンプル、アイクリーム、クリーム。ステップが増えるほど、きちんとお手入れをしている気持ちになる。一時期、「韓国式10ステップ」は、ひたむきなスキンケアの代名詞のようにもなっていました。
けれど、肌バリアをめぐる研究の多くは、むしろ逆の方向を指しています。ある一線を越えると、足したステップは肌を助けることをやめ、少しずつすり減らしはじめる。では、スキンケアには本当のところ、何ステップ必要なのでしょうか。その答えが思っているより小さくなる理由を、バリアの視点からたどってみます。
「10ステップ」は皮膚科学ではなく、売り場から生まれた
まず、当たり前なのに誰も口にしないことから。「10」という数字に、医学的な根拠はありません。あの並びは、肌に必要なものを書き出したリストというより、別々の製品カテゴリーを横一列に並べたものに近いのです。
肌が求めているのは、それよりずっと少ないもの。ステップが多いほど肌が健やかになるという明確なエビデンスはありません。むしろ、製品をひとつ足すたびに、肌が受け止めなければならない変数がひとつ増えていきます。
ステップをひとつ足すたび、その代償はバリアが払う
ひとつのステップは、ささやかに見えます。けれどバリアにとっては、そのひとつひとつにコストが伴います。大きくは3つです。
- 洗いすぎ — ダブル洗顔や、洗浄力の強いステップの重ねがけは、肌表面の脂質やタンパク質を必要以上に洗い流してしまいます。刺激の強い界面活性剤はバリアをゆるませ、つっぱり感や乾燥、刺激を残すことがあります(Ananthapadmanabhan et al., 2004)。
- 弱酸性のバランスの乱れ — 健やかな肌は、平均pH4.7前後の弱酸性に保たれています。この酸の膜が、バリアで働く酵素と、肌に棲む常在菌のバランスを支えています(Lambers et al., 2006)。pHの高い製品を頻繁に重ねれば、その均衡が揺らぐことがあります。
- 積み重なる接触 — 塗るものが増えるほど、香料や防腐剤といった、接触アレルギーの引き金になりやすい成分に出会う回数も増えます(Biebl & Warshaw, 2006)。ひとつひとつは安全でも、層が重なるほど刺激の総量は積み上がっていきます。
そのステップが与えてくれるものと、バリアに求めるもの。一度、天秤にかけてみる価値はあります。
肌は、すでに精密なシステムを備えている

バリアは、セラミド・コレステロール・脂肪酸が一定の比率で織りなす脂質の膜です。この3つをそろえて補うと、バリアの回復が速まることが示されています(Zettersten et al., 1997)。言いかえれば、肌は自分の盾を自分で組み立てるしくみを、はじめから持っているのです。
このシステムは目に見えませんが、測ることはできます。経表皮水分蒸散量(TEWL)は、バリア機能がきちんと働いているかを映す指標です(Kottner et al., 2013)。バリアが整っているほど、逃げていく水分は少なくなります。詳しくはTEWLとは何か、どう下げるかでひもといています。
だから、外から10個も与える必要はありません。肌はすでに、精密なシステムを自分で動かしています。ケアの役割は、それに取って代わることではなく、その働きを助けることにあります。
本当に必要なものは、短い
機能で整理すると、3つに絞られます。
- やさしく洗う — マイルドな弱酸性の洗顔料で。奪い取るのではなく、一日が肌に残していったものだけを、そっと持ち上げて落とします。
- バリアを支える — 肌自身の脂質に倣った保湿剤で、バリアがもう一度、自分の仕事に戻れるように。その回復にどのくらい時間がかかるのかは、結果を判断する前に知っておきたいところです。
- 守る — 日中の紫外線対策を。UVは、バリアを最も速く壊していくもののひとつです。
ものさしは、いくつ製品を持っているかではなく、この3つの役割が満たされているかどうか。同じ働きをいくつも重ねるより、役割をはっきり果たすひとつのステップのほうが強いのです。
減らすことは、手を抜くことではなく、より明確にすること
ステップを減らすというと、怠けたケア、何もしないことのように聞こえがちです。私たちの言うミニマルは、そうではありません。どちらかといえば、ノイズを下げて、シグナルがまっすぐ通るようにすることに近いのです。
肌が本当に必要としているひとつかふたつのこと——バリアを助けること——が、ほかの8つに埋もれてしまってはいけません。足すほどかえって悪くなる一線はたしかに存在し、その線の内側にとどまることは、むしろ能動的な選択にもなり得るのです。
だから私たちは、塗るという行為を、消し込んでいくチェック項目ではなく、ひとつの儀式として捉えています。いくつの欄を埋めたかではなく、そのひと塗りが、肌がすでに向かっている方向と重なって動いているかどうか。あなたの肌は、やり方をもう知っています。ケアは答えを書いてあげるものではなく、答えが自分の道を見つけるのを助けるものです。
私たちは、肌を変えるのではなく、目覚めさせたいと考えています。10のステップで新しい肌を築くより、揺らいだバリアが自分のリズムを取り戻すのを、2つか3つのステップで助けたい。そう思っています。

今日から試せる、いくつかのこと
- いまのルーティンの中で、同じ役割を担っているステップを探してみましょう。似た保湿を2つ、3つ重ねているなら、ひとつだけ残してみる。
- 今週は、ステップをひとつだけ減らして、肌がどう落ち着いていくかを見守ってみましょう。空けた余白の中で、肌が安定していくかどうかを確かめてみてください。
- 新しい製品を足す前に、「洗う・バリア・守る」の3つの役割がすでに満たされていないか、確認してみましょう。
次のひと瓶を連れて帰る前に、少しだけ立ち止まってみてください。今日のその手つきは、何かを足すためのものだったでしょうか。それとも、肌が自分の仕事をするのを助けるためのものだったでしょうか。
よくある質問
参考文献
- Ananthapadmanabhan, K. P. et al. (2004). “Cleansing without compromise: the impact of cleansers on the skin barrier and the technology of mild cleansing.” Dermatologic Therapy, 17(S1), 16–25.
- Lambers, H. et al. (2006). “Natural skin surface pH is on average below 5, which is beneficial for its resident flora.” International Journal of Cosmetic Science, 28(5), 359–370.
- Biebl, K. A. & Warshaw, E. M. (2006). “Allergic contact dermatitis to cosmetics.” Dermatologic Clinics, 24(2), 215–232.
- Zettersten, E. M. et al. (1997). “Optimal ratios of topical stratum corneum lipids improve barrier recovery in chronologically aged skin.” Journal of the American Academy of Dermatology, 37(3), 403–408.
- Kottner, J. et al. (2013). “Transepidermal water loss in young and aged healthy humans: a systematic review and meta-analysis.” Archives of Dermatological Research, 305(4), 315–323.
この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断・治療に代わるものではありません。