成分ガイド
レチノールがコラーゲンを増やすとは、どういう意味?
レチノールは、外からコラーゲンを足すものではありません。肌が自分でつくる量を増やし、分解される速さを下げる。そのしくみと、濃度や続ける期間の考え方を。
「レチノールはコラーゲンを増やす」というのは、外からコラーゲンが足されるという意味ではありません。肌が自分でつくる量が増え、分解される量が減る、ということです。レチノールは肌の中でレチノイン酸に変わり、真皮でコラーゲンをつくる細胞に働きかけると同時に、コラーゲンを切り分ける酵素を減らします。その酵素は紫外線を浴びると増えるので、レチノールの手ごたえの土台には、いつも日焼け止めがあります(Fisher et al., 2002)。効き方はゆっくりで、数日ではなく数か月の単位です。
「増やす」という言葉は、何かを外から埋めるように聞こえます。でも実際に起きているのは、肌がもともと知っている仕事を、もう一度動かし直すことに近いのです。
レチノールは、どうやってコラーゲンにたどり着くのでしょうか
塗ったレチノールは、そのままでは働きません。肌の中でレチナールを経てレチノイン酸に変わります。その形になってはじめて、真皮で支えの構造をつくる細胞の受容体(レチノイン酸受容体)と結びつきます。つまりレチノールは前駆体です。肌が変換してからでないと何も起きないので、結果は一晩ではなく、少しずつ現れます(Mukherjee et al., 2006)。処方薬として使われる強いレチノイドは、その変換の一部を飛ばします。だから働きが速く、そのぶん刺激も強いのです。
レチノールはコラーゲンを新しくつくるのか、それとも守るだけなのか
どちらもです。見落とされがちなのは、後半のほうです。レチノイドは、新しいコラーゲンをつくれという信号を高めます。それと同時に、いまあるコラーゲンを断片に切り分けるマトリックス酵素を減らします。紫外線はその同じ酵素を増やすので、日焼け止めなしの日差しは、反対側から仕事を帳消しにしていきます(Fisher et al., 2002)。毎日の日焼け止めを抜いたままレチノールを足すのは、正反対のプログラムを同時に走らせるようなものです。
変化が見えるまで、どのくらいかかるのでしょうか
多くの人が思っているより、長くかかります。平均87歳の高齢者の腕の内側の肌にレチノールローションを24週間塗った試験で、小じわに改善が見られました(Kafi et al., 2007)。顔で測った結果ではありません。レチノールの変化は数か月単位で現れるので、結果が見える前にやめないでください。なお日本では、しわ改善の効能で承認された医薬部外品があります(承認は製品ごと)。一般の化粧品で同じ効果を約束できるものではありません。使いはじめの粉ふきやぶつぶつで続けるかどうか迷ったときは、レチノール反応と本当のニキビの違いで見分け方に触れています。
ゆっくり始めたほうがよいのは、どんな人でしょうか
薄い肌、乾いた肌、反応しやすい肌は、同じ成分をより強い刺激に変えてしまいます。薄い肌、乾いた肌、反応しやすい肌なら、レチノールは低い濃度で週1〜2回から始めてください。しみるところがなければ週3回まで増やし、日焼け止めとバリア機能のケアもあわせて続けてください。最初から高い濃度を使うと、刺激で続けにくくなります。そもそもいつから始めるかについてはレチノールを始める時期を、ビタミンCとの組み合わせについてはビタミンCとレチノールの併用をご覧ください。
増やすのか、削られるのを止めるのか
「増やす」を「何かを足すこと」と読むと、より高い濃度に手が伸びます。でも、そのままの意味、つまり「つくられる量が増え、壊される量が減る」として読むと、理にかなった動き方のほうが変わってきます。毎日紫外線を防ぎ、レチノールはゆっくり足し、働いているあいだバリア機能を守ること。0.4%のレチノールローションでも、腕の肌の小じわの改善は24週間使ったあとでした(Kafi et al., 2007)。肌はいまも、自分の支えを組み立てる方法を知っています。私たちの仕事は、その力が削られていくのを止めることだと考えています。
今日の一歩
- 夜にレチノールを使うなら、日中は毎日日焼け止めを塗ってください。紫外線はコラーゲンを切る酵素を増やします(Fisher et al., 2002)。塗らなかった日がなかったかを1週間単位で確認してください。日に当たった場所がとくに赤くしみるなら、その週はレチノールを休んでください。
- 低い濃度で週1〜2回から始め、しみなかった週にだけ週3回へ上げてください。このペースはよく使われる方法で、試験で確かめたものではありません。塗った翌朝、洗顔直後にしみるかで確かめてください。しみる感じや赤みが続くなら、いったん休んでバリア機能を整え、低い濃度から再開してください。じゅくじゅくしたり腫れたりしたら、皮膚科を受診してください。
- 自分に合うかどうかは、数週間ではなく数か月使ってから決めてください。レチノールローションを24週間使った試験で、腕の肌の小じわが改善しました(Kafi et al., 2007)。およそ半年が判定の時期です。そのあいだ刺激で何度も休んだなら、濃度を下げてください。
よくある質問
参考文献
- Mukherjee S, et al. (2006). "Retinoids in the treatment of skin aging: an overview of clinical efficacy and safety." Clinical Interventions in Aging, 1(4), 327–348.
- Kafi R, et al. (2007). "Improvement of Naturally Aged Skin With Vitamin A (Retinol)." Archives of Dermatology, 143(5), 606–612.
- Fisher GJ, et al. (2002). "Mechanisms of Photoaging and Chronological Skin Aging." Archives of Dermatology, 138(11), 1462–1470.
この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断・治療に代わるものではありません。