肌トラブル・ニキビ
レチノールによる一時的な悪化(パージング)と本当のニキビの見分け方
レチノールでニキビが増えたら。一時的な悪化(パージング)と刺激は、出る場所・見た目・時期で見分けられます。続けるか、休んでバリア機能を整えるか、その判断の目安を。
レチノールを使い始めてからニキビが出たら、まずひとつだけ確かめてみてください。いつもニキビができる場所に、いつもより早く出ているなら、一時的な悪化(パージング)の可能性が高いです。これまで出なかった場所がヒリつく、粉をふく、赤みが広がるなら、それは刺激です。
多くの人は、そこですぐレチノールをやめてしまいます。けれどパージングと刺激は、原因も、とるべき手も違います。どちらなのかが分かれば、続けるか、いったん引くかを決められます。
パージングが起こる理由:レチノールがしていること
レチノイドは、角質の入れ替わりを速めることで、毛穴の奥にひそむ目に見えない小さな詰まり(マイクロコメド)を早く片づけていきます(Millikan, 2003)。すでにでき始めていて、本来なら数週間後に表へ出てきたはずのニキビが、先に姿を現すのです。ですからパージングは、新しいニキビではありません。もともと向かっていたニキビが、早く来ただけです。
どのくらい続くのか:肌そのもののサイクル
肌の表面が入れ替わるサイクルは、およそ40〜56日(Halprin, 1972)。よく耳にする「28日」よりも長い期間です。パージングが何週間続くのかを期間として確かめた研究は見つけられませんでした。トレチノインの試験も、使い始めて2週間後にニキビが増えたかどうかを見た程度です(Del Rosso, 2008)。
数週間は悪くなり、そこから落ち着いていくなら、パージングらしい経過です。ですから、ターンオーバー一巡を過ぎた2か月後も悪化する一方なら、パージングと考えずに皮膚科を受診してください。
パージングと刺激は、どう見分けるのか
レチノイドを使い始めたとき、ニキビが一時的に増える人は実際にいます(Del Rosso, 2008)。ニキビが軽い人のうち、処方薬のレチノイドであるトレチノインだけを使った人では15.4%が、2週間で炎症性ニキビが10%以上増えました。有効成分の入っていないジェルを使った人では8.7%でした。化粧品のレチノールで同じ割合を測った研究は見つけられませんでした。刺激との分かれ目は、次の3つです。
- 場所:パージングは、いつもニキビができる場所にとどまります。刺激は、これまで出なかった場所に現れたり、顔全体に赤みを広げたりします。
- 見た目:パージングはニキビらしい見た目で、小さなぶつぶつから丘疹まで。刺激はヒリつき、粉をふき、赤らむ。どちらかといえば皮膚炎に近い見え方です。
- 時期と長さ:パージングは使い始めの数週間に集中し、そこから落ち着きます。刺激は塗るたびに出て、使うほどにひどくなります。
では、使い続けてよいのでしょうか
パージングらしいなら、やめる必要はありません。パージングなら、レチノールをえんどう豆ひと粒ぶんに減らし、週2〜3回の夜に続けてください。肌がそこを通り抜けるための余白ができます。先に保湿をして、その上からレチノールを重ねると負担がやわらぐと言われています。刺激らしいなら、2〜4週間おやすみしてバリア機能を支え、それから濃度を下げてゆっくり再開してください。
まとめ|バリア機能を支え、刺激を減らす
つい、もっと強いものに手を伸ばしたくなります。あるいは、いっさいやめたくなります。パージングは、肌がもともとやろうとしていた詰まりの片づけを、レチノールが前倒ししている現象です。トレチノインの試験では、ニキビが軽い人にパージングがより多く見られました(Del Rosso, 2008)。ニキビが出ても新しいものを重ねず、バリア機能を支えながら刺激になるものを減らしてください。そうすれば肌は、自分のキメに沿って、その仕事を終えられます。
今日、ひとつだけ
- パージングなら、レチノールをえんどう豆ひと粒ぶん・週2〜3回の夜に減らしてください。量や回数を減らすとパージングが軽くなるかは、試験で確かめたものではありません。どこに、いつ出たのかを書き留め、いつもの場所に集まっているかを見てください。2か月を過ぎても悪化し続けるなら、皮膚科を受診してください。
- これまで出なかった場所のヒリつきや粉ふきが続くなら、レチノールを2〜4週間お休みしてバリア機能を優先してください。お休みの期間はよく使われる目安で、試験で確かめたものではありません。やめたあとヒリつきが落ち着くかを確かめてください。やめても赤みが広がったりじゅくじゅくしたりするなら、皮膚科を受診してください。
詰まりが片づくあいだ肌を支える方法は、バリア機能が崩れるとニキビにつながる理由と角質ケアのしすぎから立て直すまでで詳しく書いています。その回復が何週間かかるのかは、バリア機能の回復にかかる時間にまとめました。
よくある質問
参考文献
- Millikan, L. E. (2003). "The Rationale for Using a Topical Retinoid for Inflammatory Acne." American Journal of Clinical Dermatology, 4(2), 75–80.
- Halprin, K. M. (1972). "Epidermal 'turnover time'—a re-examination." British Journal of Dermatology, 86(1), 14–19.
- Del Rosso, J. Q. (2008). "Retinoid-Induced Flaring in Patients with Acne Vulgaris: Does It Really Exist?" Journal of Clinical and Aesthetic Dermatology, 1(1), 41–43.
この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断・治療に代わるものではありません。