保湿・バリア機能
ナイアシンアミドとパンテノール|バリア機能を一緒に支える理由
ナイアシンアミドとパンテノールが、肌自身のセラミドづくりとバリア機能の回復をどう支えるのか。ステップを増やすのではなく、二つの的確な助けを。研究をもとに、わかりやすく。
ナイアシンアミドは肌がバリアの脂質をもっと作れるように後押しし、パンテノール(保湿成分)はその材料と水分を支えます。二つは違う場所から、同じバリア機能を支えます。バリアがゆらぐときは、もっと強い成分を足すより、肌がバリアを作り直すのを支えるこの二つを選んでください。バリアが崩れたと感じると、よりリッチなクリームやステップ、一つの主役成分に手を伸ばしがちです。ただ、肌のバリアは一つの成分で組み上がるものではなく、作り直していくのは肌自身です。
ナイアシンアミドはセラミドに何をするのか
肌のバリアをまとめているのは脂質、なかでもセラミドです。レンガの間を埋めるモルタルのように、角質細胞のすきまを満たし、水分を抱えこみ、刺激の侵入を防いでいます。ナイアシンアミドは、この脂質を外から詰め込むのではなく、肌がもっと作れるように後押しする成分です。
ヒトの培養皮膚細胞では、ナイアシンアミドはセラミドの合成をおよそ4〜5倍に高め、その働きは濃度に応じて変化しました。あわせて、脂質合成の最初のステップを開く酵素の活性も上昇しています(Tanno et al., 2000)。同じ研究では、肌に塗布した場合にバリアの指標が改善したことも報告されています。ナイアシンアミドは、できあがった脂質を届ける成分というより、生産ラインそのものを目覚めさせる成分だと言えます。
パンテノールはバリアに何をするのか
パンテノール(プロビタミンB5)は、肌の中でパントテン酸に変わります。このパントテン酸は補酵素Aの構成成分であり、補酵素Aはバリアの材料となる脂肪酸やスフィンゴ脂質をつくる初期の段階を助けます(Proksch & Nissen, 2002)。いわば、内側から材料の供給ラインを支えているのです。
界面活性剤(SLS)で意図的にダメージを与えた肌では、パンテノール配合クリームを使うと、何も塗らない肌よりも早くバリアが戻り、刺激のサインである赤みもやわらいだと報告されています。(Proksch & Nissen, 2002)保湿成分としても水分を引き寄せ、1%以上の濃度では経表皮水分蒸散量(TEWL)を下げることが確認されています(Camargo et al., 2011)。70年にわたる使用の歴史をまとめたレビューは、パンテノールが二つの方向に同時に働くと述べています。バリア機能を支える保湿成分として、そして肌を落ち着かせる成分として(Proksch et al., 2017)。
二つを一緒に使うと、何が変わるのか
ナイアシンアミドは、脂質の生産ラインの回転を速めます。パンテノールは、そのラインが必要とする材料を支え、表面では水分を抱え、刺激を落ち着かせます。一方はレンガを多く焼き、もう一方は現場に材料を届けて粉じんを鎮める。役割はそう分かれています。
二つを一つの処方に組み合わせた大規模な試験は、まだ多くありません。ナイアシンアミドとパンテノールは、互いの効果を何倍にもするというより、役割が重ならないので補い合うと考えるほうが正確です。異なる道をたどって、同じバリアで出会う関係です。
どんな変化を期待できるのか
期待できるのは、一晩で肌が別物になることではなく、時間をかけてゆらぎにくくなっていくことです。バリアの状態はTEWLではかられることが多く(Kottner et al., 2013)、角層が自らを満たし直すには時間がかかります。週ごとの見取り図はバリア機能の回復にかかる時間にまとめました。数日で判断するより、つっぱり、赤み、ヒリつきが数週間でどう変わっていくかを見るほうが、これらの成分の働き方には合っています。
一時期の私は、バリアが弱るたびに成分を一つずつ足していました。当時は気づいていなかったのです。肌に回復するための時間を渡すかわりに、新しい変数を増やし続けていたことに。パンテノールとナイアシンアミドに戻ってきたのは、どちらも同じ静かな仕事をするからでした。肌がすでにやっていることに、そっと手を添える。それだけです。
足すことと、目覚めさせることは何が違うのか
この組み合わせを「強いアクティブ成分を二つ重ねたもの」と読むと、大切なところを取り逃がします。肌はすでにセラミドをつくっています。整え直す道すじも、すでに知っています。ナイアシンアミドとパンテノールは、その仕事を肩代わりするものではありません。手を添えるだけです。
バリアを支える組み合わせは、成分を十も重ねる話ではありません。肌自身のプロセスが実際に使う二つを選び、その邪魔をしていたものを減らしていくことです。二つの成分を使うときは、洗いすぎや頻繁な角質ケアのように、バリアをゆらがせる習慣から減らしてください。いちばん強い助けは、いちばん小さく、いちばん的確な助けです。
まとめ|二つの成分は、肌の仕事を二方向から支える
ナイアシンアミドは肌がセラミドをもっと作れるように後押しし、パンテノールは材料と水分を支えます。ヒトの培養皮膚細胞では、ナイアシンアミドはセラミドの合成をおよそ4〜5倍に高めました(Tanno et al., 2000)。働く場所が違うので、二つは補い合います。バリアがゆらぐときは、成分を重ねるより、二つが一緒に入ったアイテムを一つ、数週間続けて使ってください。
今日の一歩
- バリア機能をゆらがせているものを、一つ減らしてください。一日二回の強い洗顔や、頻繁な角質ケアがあるなら、そこからです。減らしたときにどれだけ良くなるかを、試験で確かめたものではありません。数週間かけて、つっぱりと赤みがどう変わるかを見てください。減らしても赤みやヒリヒリが数週間変わらない場合は、皮膚科を受診してください。
- パンテノールとナイアシンアミドが、同じステップに入っているか確かめてください。美容液(セラム)やアンプル一本なら、ステップを増やさずに両方の働きを残せます。ただ、一つの処方にまとめたほうが別々に使うより良いと、試験で確かめたものではありません。成分表で二つの名前を探してみてください。新しく使って、ヒリヒリや赤みが出たら、そのアイテムをやめてください。
- 判断する前に、数週間の時間を肌に渡してください。角層が自らを満たし直すには時間がかかるという考え方で、二つの成分でその期間を試験で確かめたものではありません。数日ではなく数週間の流れで、つっぱり、赤み、ヒリヒリの変化を見てください。数週間たってもヒリヒリが減らない、または強くなる場合は、皮膚科を受診してください。
よくある質問
参考文献
- Tanno, O., Ota, Y., Kitamura, N., Katsube, T., & Inoue, S. (2000). “Nicotinamide increases biosynthesis of ceramides as well as other stratum corneum lipids to improve the epidermal permeability barrier.” British Journal of Dermatology, 143(3), 524–531.
- Proksch, E., & Nissen, H. P. (2002). “Dexpanthenol enhances skin barrier repair and reduces inflammation after sodium lauryl sulphate-induced irritation.” Journal of Dermatological Treatment, 13(4), 173–178.
- Camargo, F. B. Jr., Gaspar, L. R., & Maia Campos, P. M. B. G. (2011). “Skin moisturizing effects of panthenol-based formulations.” Journal of Cosmetic Science, 62(4), 361–370.
- Proksch, E., de Bony, R., Trapp, S., & Boudon, S. (2017). “Topical use of dexpanthenol: a 70th anniversary article.” Journal of Dermatological Treatment, 28(8), 766–773.
- Kottner, J., Lichterfeld, A., & Blume-Peytavi, U. (2013). “Transepidermal water loss in young and aged healthy humans: a systematic review and meta-analysis.” Archives of Dermatological Research, 305(4), 315–323.
- Davis, E. C., & Callender, V. D. (2010). “Postinflammatory hyperpigmentation: a review of the epidemiology, clinical features, and treatment options in skin of color.” Journal of Clinical and Aesthetic Dermatology, 3(7), 20–31. PMID: 20725554.
この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断・治療に代わるものではありません。