組み合わせ・順番
ナイアシンアミドとAHA・BHAは、同じルーティンで使えます
酸がナイアシンアミドを打ち消すという通説は、1962年の加熱実験にさかのぼります。その研究が実際に測っていたことと、二つを同じルーティンで使える理由。
グリコール酸・乳酸・サリチル酸のような酸とナイアシンアミドは、ふだんの使い方であれば一緒に使って問題ありません。酸を使う日も、ナイアシンアミドは外さずにそのまま使ってください。酸を使った日はナイアシンアミドを休むべき、せめて 20〜30 分は置いてから重ねるべき、という話を耳にしたことがあるかもしれません。酸がナイアシンアミドをナイアシンに変えて顔が赤くなる、pHが合わないから互いに打ち消し合う、という理由です。赤みの話がよく根拠にするのは1962年の加熱実験で、「打ち消し合う」の話は、肌が自分でpHを戻すことを抜かしています。
ナイアシンに変わるという話は、どこから来たのか
ナイアシンアミドはビタミンB3の一種で、条件がそろえばナイアシン(ニコチン酸)に変わることがあります。この反応がていねいに測られたのは1962年のことでした(Finholt & Higuchi, 1962)。その速度を追いかけるために、研究者たちは溶液を室温よりはるかに高い温度まで加熱しなければなりませんでした。ふつうの温度では、遅すぎて追いかけられなかったのです。
同じ研究のなかで、この変化がもっとも遅かったのは弱酸性から中性の範囲でした。まさに、肌とスキンケアが暮らしている領域です。ナイアシンアミドがナイアシンに速く変わるのは、強い酸・アルカリと高温、長い時間がそろったときで、洗面台ではなく実験室の条件です。
肌の上でもナイアシンアミドは変わるのか
顔にのせた化粧品は体温に近い温度でとどまり、次の一枚は数分のうちに重ねられます。スキンケアの酸はおおむねpH3〜4のあたりで、しかも長くはとどまりません。体温で数分ふれる程度では、ナイアシンアミドが意味のある量だけ変わるとは考えにくいです。ナイアシンアミドは広いpHの範囲で安定し、肌の上でもよく受け入れられる成分として知られています(Wohlrab & Kreft, 2014)。
酸のほうも働き続けます。グリコール酸・乳酸・サリチル酸は遊離酸の形で働き、その割合はpHが下がるほど増えます(Kornhauser et al., 2010)。上からナイアシンアミドを重ねても、そのスイッチが切れるとは考えにくいです。肌の表面は平均するとpH5を下回る弱酸性で(Lambers et al., 2006)、一時的に乱れたpHも時間がたてば戻ることが知られています。
ナイアシンフラッシュは、どうして起きるのか
顔が赤くなるのでは、という不安の正体はナイアシンフラッシュです。ニコチン酸が血管を広げることで起きる、実在する反応です。ナイアシンフラッシュは、おもにニコチン酸を口から摂ったときに起きる反応として知られています。体温の肌の上では、ニコチン酸そのものがほとんど生じないと考えられます。
酸をのせた直後にナイアシンアミドを重ねると、一瞬ぴりっとしたり、じんわり温かく感じたりすることはあります。それはアクティブ成分を重ねたときによくある一時的な刺激として知られていて、ナイアシンアミドが「ナイアシンに変わった」しるしではありません。
一緒に使うとき、本当に気をつけることは何か
この二つが互いを台無しにする、という心配は、もう下ろしてしまって大丈夫です。ナイアシンアミドと酸を一緒に使うときは、強いアクティブ成分を一度に重ねすぎないでください。酸かどうかにかかわらず、強いアクティブ成分をいくつも並べれば、バリア機能への負担は積み上がっていきます。ルーティンがその線を越えていないかは、ちょっとしたセルフチェックで確かめられます。ナイアシンアミドはバリア機能を支える成分として知られています(Wohlrab & Kreft, 2014)。
酸のあとナイアシンアミドまで 20〜30 分待たなければならない、という話もよく目にします。けれど体温で数分のうちに意味のある量が変わるとは考えにくいので、そこまで長く待つ必要はありません。敏感に傾いていて、ぴりつきが気になるなら、一、二分置くか、朝と夜に分けてください。
まとめると、二つを引き離すためにステップを増やす必要はない
ナイアシンアミドがナイアシンに変わる反応は、強い酸・アルカリと高温のもとでようやく速くなり(Finholt & Higuchi, 1962)、肌の表面は平均するとpH5を下回る弱酸性です(Lambers et al., 2006)。もともと争っていない二つを引き離すためにステップを足す理由はありません。適切なpHでアクティブ成分を一緒に抱えられる理由は、よくつくられた処方が、適切なpHでアクティブ成分を一緒に抱えていられる理由をご覧ください。ぴりつくときは、二つを朝と夜に分けるか、アクティブ成分をひとつ減らしてください。
今日の一歩
- 酸を使う日も、ナイアシンアミドを外さずに塗ってください。ナイアシンアミドがナイアシンに速く変わるには、強い酸・アルカリと高温、長い時間が必要でした(Finholt & Higuchi, 1962)。気持ちが落ち着くなら、酸のあと一、二分置いてから重ねてみてください。塗ったあとの赤みが何日も続くなら、皮膚科を受診してください。
- ぴりつきを感じたら、アクティブ成分をひとつ減らしてください。ぴりつきが相性によるものか、数によるものかを試験で確かめたわけではありません。減らした翌日、同じ場所のぴりつきが軽くなったかを見てください。新しい組み合わせは一度にひとつずつ取り入れ、減らしてもぴりつきと赤みが続くなら、皮膚科を受診してください。
よくある質問
参考文献
- Finholt, P., & Higuchi, T. (1962). "Rate studies on the hydrolysis of niacinamide." Journal of Pharmaceutical Sciences, 51, 655–661.
- Wohlrab, J., & Kreft, D. (2014). "Niacinamide – mechanisms of action and its topical use in dermatology." Skin Pharmacology and Physiology, 27(6), 311–315.
- Kornhauser, A., Coelho, S. G., & Hearing, V. J. (2010). "Applications of hydroxy acids: classification, mechanisms, and photoactivity." Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology, 3, 135–142.
- Lambers, H., Piessens, S., Bloem, A., Pronk, H., & Finkel, P. (2006). "Natural skin surface pH is on average below 5, which is beneficial for its resident flora." International Journal of Cosmetic Science, 28(5), 359–370.
この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断・治療に代わるものではありません。